フリーハグ全国で流行 上毛新聞20070819
フリーハグ全国で流行 上毛新聞20070819
見知らぬ同士で抱擁 苦しみ癒しあう
「一緒にハグ(抱擁)しませんか」-。
街頭で「FREE HUGS(フリーバグ)」
と書かれたボードを掲げ立つ若者たち。見
知らぬ人と抱き合うことで生きている喜び
を分かち合い、苦しみを癒やそうという運
動がインターネット上の口コミを通じて全
国で流行している。
名古屋経済の好況を背景に高層ビルの建築ラッシュ
に沸く名古屋駅前で通行人に抱擁を求める若者たちを取材した。
「初めて他人と抱き合ったとき、人間は温かいと実
感できた」。名古屋市の男子大学院生で通称「ゆうり」
さん(23)は語る。六月から、JR名古屋駅前などで連日
三時間以上活動している。ネットの掲示板で呼び掛け
ると、二十代を中心に十数人がボードを持ち集まる。
少ない日は数人、多い日は数十人の通行人がハグに応じる。
「何の変化もなく日々を消化していくだけだ」。ハ
グに参加する以前日常に息苦しさを感じていたゆうり
さん。駅前でハグを求めて立つ女性が気になってい
た。「何かの宗教か、劇団の人かな。お金を請求され
るの?」。友人間でも話題に。だが、悩みを抱えてい
た友人の一人がある日ハグに応じ、それをっかけに
笑顔を取り戻した。「みんな触れ合いを求めている。
自分もハグを通じて小さな希望を与えられるかも」女
性を見掛けて約二カ月後。ゆうりさんはボードを持ち
街角に立っていた。
精神科医で若者文化に詳しい香山リカさんは「人と
交わりたいが、踏み込むのは面倒という心理が強い、
平板な現代を象徴する現象だ」と厳しい意見だ。
記者(三十歳、男性)も手製ボードを持ち、平日の
夕方に同駅前に立ってみた。行き交う人のいぶかし
げな視線が痛い。「誰も応じてくれないのか」。約一
時間後、手を広げ近寄ってくる制服姿の女子高生(18)
とようやくハグできた。温かい。彼女は「私も〝ハグ
ラー〟ですよ」とハートマークで縁取られたボードを
広げた。来年は大学受験だが「学校は狭い。こっちの
方が活動する人も深く考えているし世界が広がる」。
ハグに立つ人がいれば必ず抱き合うという仕事帰りの
派遣社員の女性(31)は「自分と他人の境界線が無くなったようで気持ちい
い」。ハグに応じてくれたカナダからの留学生(24)は
「僕の国でもハグはするけど知らない人とはしない
ね。でも、ハグは気持ちいい。日本でも広まるまるとい
ね」と話していた。
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