フォトアルバム

フォトアルバム

最近のトラックバック

Powered by Six Apart
Member since 10/2004

更新ブログ

« 20060531から0601まで | メイン | 利き酒会報告 »

2006-06-09

北村豊の「中国・キタムラレポート

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラレポート」】
 中国の屋台は危険がいっぱい いまだに残る 髪の毛で作る「醤油」
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_3478_56054_55

中国に残る 髪の毛で造る「醤油」
政府の摘発追いつかず 未だに屋台で使われる

2006年6月9日 金曜日 北村 豊
「毛塵屋」という商売をご存じだろうか。
 
 これを「けじんや」と呼び、これは理容室や美容院を回って頭髪の切り屑である「毛屑」を集める商売で、既に日本ではこの商売は消滅したものと思われる。

 かつての日本でこの毛塵屋さんが買い集めた毛屑をどうしていたのかは分からないが、恐らく買い集められた毛屑は専門の業者の所に集められて、長さのある良質の髪はカツラや「髪文字(かもじ)」という女性の添え髪の材料となり、それ以外の毛屑は工業用のアミノ酸の原料となっていたものと思われる。旧知の美容師さんに聞いたところでは、美容室が毛塵屋さんに毛屑を渡すとお金を支払ってくれるのではなく、「髪文字」と交換してくれたという。

 ところで、今回のテーマである「毛髪醤油」とは何か。「毛髪」と「醤油」に何の関係があるのだろう。上述したように、毛髪がアミノ酸の原料であり、醤油の原料がアミノ酸であることが分かれば、自ずと毛髪から醤油ができることが理解できよう。
 
 日本でも戦中から戦後の物不足時代には「毛屑から代用醤油が作られた」との毛髪研究家の記述が「ニューヘアー」という雑誌の1982年9月号に掲載されている由で、その作り方は、毛屑を10%の塩酸の中に入れて24時間ほど煮沸した後に濾過して苛性ソーダで中和させるとのこと。

 また、日本の企業が頭髪から工業用アミノ酸を製造していたことは事実だが、毛塵屋を経由して毛屑を集めると人件費がかさんで採算に合わず、現在では製造していないようだ。

密造されている毛髪醤油
 さて、中国では政府により毛髪醤油の生産禁止命令が再三出されているが、毛髪醤油は依然として全国各地で密造され、低級醤油として販売されているという。中国では2004年1月に国営テレビ局「中央電視台」の「毎週質量報告」(質量は品質の意味)という番組で毛髪醤油問題が取り上げられたが、それほど大きな問題とはならなかった。

 ところが、2005年10月に遼寧省瀋陽市(中国語では沈陽市)の新聞「沈陽今報」の記者が毛髪醤油のできるまでを追跡報道したことから、中国全土で大きな反響が巻き起こった。

 記者の論点は、中国の醤油の一部には毛髪から作られた醤油があるが、これらの醤油にはガンを誘発する物質が含まれており、政府により再三の生産禁止命令が出されているにもかかわらず、欲に目がくらんだ悪徳商人は今もなお毛髪醤油を生産しているというもの。

 記者の追跡は、瀋陽市内の理髪店に毛屑を買いに来る毛塵屋との接触から始まる。毛塵屋から東北地方の毛屑買いう付けの元締めへの接触に成功する。記者は、醤油製造用アミノ酸の買い付けを口実にアミノ酸工場の紹介を依頼するが元締めは煮え切らない。そこで、最初の毛塵屋から聞いていた、元締めが買い付けた毛屑の搬送先であり、元締めの故郷である河北省新楽市へ行くことを決意する。

 記者が行き着いた所は、河北省新楽市鋒彭家庄回族郷小宅甫村という小村。小宅甫村で記者が見たものは全国各地から集められた毛屑の山。小宅甫村には30軒ほどの毛屑卸問屋があり、買い集められた毛屑はゴミを取り除いて梱包してから、全国のアミノ酸生産メーカーへ出荷されるが、毎日の出荷量は100トンを下らないという。

 当時(2005年の夏頃か)の出荷価格は500グラムで約7毛(約10.5円)に過ぎず、利益は極めて小さいが量の多さでやっていけるとのこと。一方、アミノ酸メーカーは、14トンの毛髪から1トンのアミノ酸が作れて、高級アミノ酸は1万元以上で売れるので、大もうけしていると。

 記者は小宅甫村で毛髪の納入先のアミノ酸工場が、河北省石家荘の西環化工廠と山東省青州市の振興化工廠であることを確認する。その後記者はアミノ酸い買付けを装ってこれら2社を訪問、工場見学を含めた取材に成功し、以下を確認する。

(1)アミノ酸生産には、設備購入などで最低でも1000万元(1億5千万円)の投資が必要。
(2)アミノ酸は多くが輸出されるが、醤油の原料となるのはアミノ酸母液というアミノ酸生産の副産物である。
(3)アミノ酸母液の価格はアミノ酸含有量が25%以上のもので1トン300元(約4500円)、これが最も醤油生産に適する。
(4)アミノ酸メーカーは醤油の一種である調味液を作っている。これは価格が若干高めだが、各地に販売され、多くの高級ホテルでも使われている。

 記者は遂に地元の瀋陽市内でアミノ酸母液を購入して毛髪醤油を生産している秘密工場にたどり着く。工場は深夜操業で醤油を生産しており、卸価格は最低ランクの3級醤油が500グラムで1角8分(約2.7円)とのこと。
 
 専門家によれば、正常な醤油の製造原価は7角(約10.5円)であり、それ以下の醤油の品質は保証できないと。中国では醤油にも厳格な食品衛生基準があるが、これを守らない悪質業者が後を絶たないと記者は結んでいる。

「安かろう悪かろう」は万国共通
 毛髪醤油の話が長くなったが、これに限らず中国では品質の悪い食品による事件が次から次へと起こっている。
 
 安徽省阜陽市で2004年3月に摘発された低劣な品質の粉ミルク事件は、粉ミルクによる栄養不良によって13人の嬰児が死亡したものであった。
 
 この事件を契機に全国で販売されている粉ミルクを調査したところ、問題発覚からたった1カ月でなんと130トンもの品質低劣な粉ミルクが押収される有り様で、阜陽市のみならず全国各地で同様に低劣品質の粉ミルクを製造や販売をしていた人たちの逮捕劇が続いた。

 こうして書いてくると中国では物を食べてはいけないように思う人がいるかもしれないが、それは中国で「中国菜」(中華料理)を食べるのを無上の楽しみにしている筆者の言わんとするところではない。

 問題の主体は低価格の食品であり、上述した毛髪醤油も粉ミルクも低価格の商品であった。「安かろう悪かろう」は万国共通であり、中国に行かれた際には、たとえ好奇心がわいても「安い食品は食べない、路傍の屋台店では食べない」が鉄則である。日本では中華料理は高級感漂う店は素材が良いだけで美味しくないと言うが、これは中国でも当てはまる話。

 ただし、そうは言っても、低級感が漂う店は、素材も安ければ、調味料も安いので、避けた方が身のためである。

(北村 豊=住友商事総合研究所 中国専任シニアアナリスト)

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.kazelog.jp/t/trackback/13917/4093600

北村豊の「中国・キタムラレポートを参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

コメントは記事の投稿者が承認するまで表示されません。