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2007年9月 4日 (火)

後継者難深刻に中小の処方せん(上)会社存続へ「譲渡」選ぶ。

後継者難深刻に中小の処方せん(上)会社存続へ「譲渡」選ぶ。
2007/09/04, , 日経産業新聞, 22ページ, 有, 2127文字 

経営者の高齢化 急ピッチ
技術・ブランド後世に
 中小企業が後継者難という苦境に立っている。二〇〇六年版「中小企業白書」
によると、後継者不足を理由に廃業する中小企業は年に約七万社、失われる
雇用は二十万人を超えるという。本来は事業を承継する立場の創業家出身者
なども「高リターンを望めないのに、背負うリスクは大きい」と二の足を踏む。
問題解決には何が必要か。三回にわたって事業承継問題の解決のヒントを探る。
後進育成できず
 香港に本拠を構える玩具メーカーのハンザワ。半沢恒雄会長は同社を
一九八二年に創業、南米やロシア、東欧に独自販路を開拓し事業を拡大
してきた。だが、半沢氏も今年六十八歳。今まで後進育成を考えたこともなく、
気が付けば「これから育てるのは難しくなっていた」。
 半沢氏が会社を存続させるために選んだ手段はM&A(合併・買収)。
自社を買収してくれる企業がないかほかの玩具メーカーなど複数候補に相談
を持ちかけた。その中で話が進んだのがハンザワとは異業種の電子機器・部品
商社の加賀電子で、四月に全株式を譲渡した。加賀電子が玩具事業に興味を示し、
しかも「以前から仕事上の取引があり信頼できた」(半沢氏)のが決め手に
なった。
 その後、半沢氏は社長を退き、加賀電子が社長として三舛清美氏を派遣した。
半沢氏は「長年手塩にかけて育てた会社を手放すのは一抹の寂しさを感じたが、
会社存続を第一に考えた」と語る。
 中小企業の経営者は、社内では大企業の経営者以上に大きな権限を持つケース
が多い。それ故、後継者が見つからないうちに万が一、健康問題などで職務を
遂行できなくなれば経営の空白状態が生まれる。最悪、廃業を余儀なくされる。
それならば他社の傘下に入っても会社存続を確実にする方が、経営者としての
責任を果たしているとも言える。
 銘菓「草木饅頭(まんじゅう)」を製造する創業九十三年の老舗、
江口栄商店(福岡県大牟田市)。同社の創業一族も二〇〇六年五月、
事業承継を優先して経営権を手放した。全株式を熊本市の菓子メーカー、
お菓子の香梅の副島隆社長に譲渡したのだ。
 譲渡前に江口栄商店で専務を務めていた創業家の江口忠子氏が事業承継を
真剣に考え始めたのは、六十歳を目前に控えた〇〇年だった。社長だった
実姉も六十五歳が迫っていた。二人ともに子供はなく、女性ばかり三十人の
従業員のなかから後継候補を見つけるのも難しかった。
 悩んでいた時に取引銀行から紹介されたのがお菓子の香梅の副島社長。
「味、商号、従業員をそのまま引き受けてくれるなら」という江口氏の条件を
副島社長が了承し、株式譲渡が成立した。
「新陳代謝」鈍く
 帝国データバンクによると資本金五千万円未満の企業の代表者の平均年齢は
〇六年に五十九歳だった。資本金十億円以上の企業の代表者は平均年齢が
過去十年でほぼ横ばいなのに対し、資本金五千万円未満の企業では約三歳上昇
した。事業承継という“新陳代謝”が進まないため、中小企業経営者の高齢化
は急速に進行している。
 自動車部品などの試作品メーカー、TMC(埼玉県戸田市)創業者の
川崎弘明社長も今年六十四歳になり、後継者が決まらない現状に焦りを感じ
ている。一九七七年に会社を設立し徐々に事業分野を広げてきたが跡取り息子
はなく、社内にも後継候補は見あたらないという。
 最近では「このまま後継者が見つからなければ廃業の可能性も否定できない」
と危機感を抱くようになった。事業承継のためには、M&Aの誘いに乗り他社の
傘下に入ってもかまわないと打ち明ける。
 中小企業の経営者は会社を切り盛りしてきたという自負があるため
「事業承継の事前準備を十分にしていないケースが多い」(中小企業庁)。
そのため高齢になって引退を考え始めた時には後継者が見つからない事態
に陥るケースも多い。
 M&Aは後継者問題の打開策として注目を集める。ただ、M&Aの話が
舞い込むのは高い技術力や強い商品ブランドを持つ中小企業に限られる。
「困ったら身売りすればよい」といった安易な考えは禁物だ。
政府、雇用維持へ後押し
税制見直しなど検討 支援センター全国に
 政府は雇用維持の観点からも中小企業の事業承継を促したい考えで、
承継時の相続税負担を軽減する事業承継税制の見直しなどを検討中。
ただ、資金調達を借入金に頼るケースが多い中小企業は、経営者の
個人保証や個人資産の担保提供などを求められる場合が多い。そのため
実子でさえ、後継になるのに二の足を踏みがちだ。
 そこで、親族以外への承継を促進するため、政府は二〇〇八年度に
新規に二十億円の予算を要求している。中小企業経営者に承継先を仲介する
「事業承継支援センター」を全国百カ所に新設する計画だ。
 民間の仲介機関でも既に事業承継に絡むM&Aが増えている。
日本M&Aセンターの〇七年四―六月のM&A成約数は十九件と前年同期比
三五・七%増えた。「中小企業経営者のM&Aへの抵抗感は薄れている」
と日本M&Aセンターの飯野一宏執行役員経営企画室長は指摘する。

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