設置増えるAED 操作手順、音声で案内
設置増えるAED 操作手順、音声で案内
上毛新聞20070515
心肺停止状態に陥った人の心臓に電気ショックを与え、
拍動を再開させて救命する自動体外式除細動器一AEDその
使用が、医療従事者以外の一般市民にも解禁されて二年近く
がたった。設置数は急増し、さまざまな場所で見掛けるよ
うになった。だが、果たしてどれだけの人が、いざというと
き迅速にAEDを使えるだろうか。器械の威力を生かすには、
一層の啓発が必要だ。
突然の細動
「皆さんに助けていただいた。感謝でいっぱいで
す」。入院先のベッドで、五十代男性は安堵の表情を
浮かべた。四月六日、男性は岩手県北上市の会社で会
議中、突然、頭から血が引いていくのを感じた。その
後のことは全く覚えていない。
男性の異変に、十人ほどの出席者全員が気付いた。
呼吸は荒く、全身の力が抜けたようにいすからずり落
ちそうになる。床に寝かせて「大丈夫ですか」と声を
掛けたが、既に意識はなかった。
手分けして気道の確保や心臓マッサージを行った。
社内の保管場所からAEDが届き、同僚の一人が男性
の胸に電極パッドを装着。すると、心臓がけいれん状
態になる「心室細動」をAEDが自動感知し、通電ボ
タンを押すよう指示する音声が流れた。電気ショック
を1回、さらに心臓マッサージと人工呼吸を施すと呼
吸が戻ったその数分後、救急車が到着した。
毎日100人
AEDを扱った同僚はー昨年、消防の救命講習で使
い方を学んでいた。また、昨年のAED設置後に全社
員対象の講習会が開かれていたことも幸運だった。「全
員の連携がうまくいった」と、この同僚は振り返る。
男性の主治医、茂木格・北上済生会病院副院長は
「早い時期にAEDを使ったことが良かった。後遺症
もなく、社会復帰に問題はない」と話す。
AEDに詳しい三田村秀雄・東京都済生会中央病院
副院長によると、国内では毎日百人近くが心臓突然死
に見舞われ、その七、八割で心室細動が起きている。
細動が現れると数秒で意識を失い呼吸が止まる。救命
には電気ショックによる細動の除去が不可欠だが、除
細動が一分遅れるごとに救命率は約10%ずつ低下す
る。しかし、通報から救急車到着までは平均6分を超
えるのが現状だ。
自販機にも
この時問の〝壁″を打破するのが一般市民のAED
使用で、二〇〇四年七月に解禁された。空港や駅、ホ
テル、学校、スポーツ施設などで設置が進み、AED
搭載の自動販売機も登場している。
設置数は〇六年末現在約九万台で、半分は昨年の設
置。救命事例は少なくとも三十数例に達した。今年二
月の東京マラソンで参加者二人が救われたのは記憶に
新しい。
ー方、AEDがあつたのに使われなかった事例もあ
る。「使用にちゅうちょは禁物。電極を陶に張れば、
AEDが心電図を自動解析し、操作手順を音声で教え
てくれる。簡単で安全な器械だが、こうした知識の普
及は不十分」と三田村さん。
今後はさらなる設置拡大とともに「学校で救命の意
義や使い方を教えるなど、政府による国民的啓発が必
要だ」と三田村さんは指摘している。
AEDの使い方
①意識の有無を確認
②意識がなけ119番通報とAEDの取り寄せ
③気道を確保し呼吸を確認
④呼吸が異常なら、心臓マッサージと人工呼吸
⑤AEDの電源を入れ、電極パッドを患者の胸に張る
⑥AEDが心電図を自動的に解析 電気ショックが必要な場合、
通電ボタンを押すよう指示する音声カイタンスが流れる
⑦患者から離れてボタンを押す
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