政府負債残高の不思議
政府負債残高の不思議
読売新聞19970712
近着の「OECDエコノミックアウトルック」
(九七年六月)のページを操っていたら、興味深い表
に行き当たった。「一般政府純負債」と題する、
政府部門の純負債残高の対GDP比を一覧にした表である。
その九六年の欄を見ると、
日14.3%、仏39.3%、英44.2%,独48.1%,米49.2%
といった数字が並んでいる。何と、日本の数字は主要国の中で
最も低くなっているのである。
その表のすぐ前にあるのが、政府の総負債残高の対GDP比を示した表である。
欧米主要国がイータリアを除いて六〇%台であるのに対して、
日本は八〇%台で先進国中最悪ーこの方は政府の宣伝もあってすっかり有名になった。
対GDP比で見て、日本政府の総負債残高は主要国中最大である、しかし、
純負債残高は主要国中最小である。この二つの事実の問に矛盾はな
い
日本政府が、結構な額の金融資産を有している、ということである。
これも近着の「国民経済計算年報」(九七年版)
で、九五年度末に政府の保有する金融資産の残高
を見ると三百九十四兆円とある。負債残高は四百
四十八兆円であり、両者の差額五十四兆円が政府
の純負債残高というわけである。
国債残高や地方債残高が累増しており負債が多い、
しかし一方で社会保障基金や外貨準備などが積み上がっていて
金融資産も結構多い。差し引き政府の純負債はそんなに多くない
ーそれが国際比較した日本の財政の現状だ。
財政再建を言うのもいいが、まずはこうした現状を素直に
示してから議論を始めるべきではないか。それを、一つの
数字だけ示して、しかも「最大」を「最悪」と言い換えたりするのはあまり
フェアとは言えない。
ちなみに、「一般政府の純金利支払額」の対GDP比を、これもOEC
Dの表で見ると、
日0.9%(九六年)米2.2%、独、英3.2%などに比べ、はるかに低率である。
(第ー勧銀総合研究所専務理事・山家悠紀夫)
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